【歴史的建造物アーカイブ】不二家伊勢佐木町店
ハマっ子にとっては馴染みのある不二家伊勢佐木町店(現横浜センター店)。店舗ビルは実は古く79年も前の昭和13年(1938)建造で、設計は山手のエリスマン邸なども手がけた建築家アントニン・レーモンド。
明治43年(1910)に創業者の藤井林右衛門が元町に洋菓子店を開いたことから始まる不二家。伊勢佐木町店は大正11年(1922)に開店しシュークリームなどが人気を博したが、翌大正12(1923)年に発生した関東大震災により店舗は消失。しかし翌年の大正13年(1924)にはバラックを建て営業を再開したという。その後昭和13年(1938)に現在も使用されるこのモダンなビルディングを新築しリニューアルオープンした。建物の設計者であるチェコスロバキア出身の建築家アントニン・レーモンドは、帝国ホテル建設に際し近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトとともに来日。その後も長きに渡り日本に留まり、日本建築界に多大な影響を与えた。代表作として横浜では山手のエリスマン邸が知られ、他にフェリス女学院大学10号館(旧ライジングサン石油会社社宅)が現存している。建物は水平連続窓のある直線で構成されたシンプルなスタイルの、当時インターナショナルスタイルと称されたモダニズム建築。建物左側に垂直なラインをつくる大胆に用いられガラスブロックが特徴的で、左右非対称のデザインをつくりだしている。
銀座と並び最先端の町であった伊勢佐木町に、最先端の建築様式をひっさげて登場した不二家伊勢佐木町店。建物はそれから79年の月日を経た現代の街にもすんなり馴染み、一見古い建物だと気づかぬほどで、それだけいっそう当時はどれほど斬新だったことかと思わされる。歴史を経てきた建造物が少なくなった伊勢佐木町に残る、これからも大事にしたいハマを代表するモダンビルディング。
(DATA)
建築年代:昭和13(1938)
構造/規模:RC造6階
設計:アントニン・レーモンド
指定/分類:未指定
所在地:横浜市中区伊勢佐木町1-6-2