【旧道・古道】横浜旧東海道を歩く~神奈川宿vol.2~

かつては袖ヶ浦と呼ばれた入江の広がる景勝地として名高かった現在の京急神奈川駅から横浜駅西口付近。歌川広重にも描かれた風光明媚な景観を見ることは今では叶わないこととなったが、旧道沿いに連なる寺社仏閣や地形の名残から在りし日の面影を見つけることができる。「横浜旧東海道を歩く~神奈川宿vol.2~」では滝の川から青木町、台町の坂を経て終着点の上台橋を目指す。

浄瀧寺(じょうりゅうじ)
滝の川に架かる土橋を渡ると川のほとりに「浄龍寺」がある。創建は鎌倉時代といわれ、開港当時にはイギリス領事館に充てられた。
神奈川宿②11-THE YOKOHAMA STANDARD

宗興寺(そうこうじ)と神奈川の大井戸
浄龍寺のすぐ近くにある「宗興寺」は、開港当時に宣教医のシモンズが住み、ヘボンがここで診療所を開いていたことで知られる。また宗興寺脇の「神奈川の大井戸」は、江戸時代には東海道中の名井戸に数えられ、宗興寺は”大井戸寺”とも呼ばれたという。
神奈川宿②10-THE YOKOHAMA STANDARD

「神奈川の大井戸」
神奈川宿②9-THE YOKOHAMA STANDARD

権現山(ごんげんやま)
宗興寺の脇から坂を登りしばらく進むと、石垣に囲まれた幸ヶ谷公園(こうがやこうえん)が見えてくる。幸ヶ谷公園の辺りはかつて神奈川宿でひと際高い「権現山」と呼ばれ、本覚寺方面の丘とも一続きであったが、鉄道路線の整備や台場の埋め立ての為に切り崩されてしまった。権現山は戦国時代の古戦場としても知られる。
神奈川宿②8-THE YOKOHAMA STANDARD

宮前商店街
旧東海道は宮前商店街から国道15号線と分かれる。
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洲崎大神(すざきおおかみ)
幸ヶ谷公園の脇の坂道を下りて行くと宮前商店街に出て、通りの右手に「洲崎大神」の鳥居が見える。洲崎大神は源頼朝が安房神社より分祀し、建久2年(1191)幕府直轄の神社として創建された。石段を登りながら広く深い境内を進んでゆくと、境内の上段に大きな木が立ち並び、木立に包まれたような空間が広がる。
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青木橋(あおきばし)
甚行寺、普門寺を過ぎ宮前商店街を抜けると青木橋に出る。1872年に新橋~横浜間に開通した日本初の鉄道は、権現山として一続きであった幸ヶ谷公園の丘と本覚寺の丘の間を切り開くことでこの区間に鉄道を通した。青木橋はこの路線をまたぎ旧東海道を結ぶ為に架けられた。
「青木橋から幸ヶ谷公園方面を望む」
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本覚寺(ほんがくじ)
青木橋横の高い石積擁壁の上にある「本覚寺」は鎌倉時代の創建とも伝えられる。開港当時アメリカ領事館として使用されたことで知られる。当時、庭の松の枝を落としそこに星条旗を掲げ、山門を白くペンキで塗り、日本人の立ち入りを禁じたという。山門は地域で唯一当時から残る建築として、色は戻され今も建つ。山門脇のスジダイの大きな古木も見事。
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大綱金刀比羅神社(おおつなこんぴらじんじゃ)
本覚寺から旧東海道の進路に戻ると、ほどなくして「大綱金刀比羅神社」の鳥居が見える。江戸時代には神社前の街道に一里塚があったという。大綱金刀比羅神社の創建は平安末期とも伝えられ、もとは飯綱社といい現在地の後方の山上にあった。境内奥には弁財天が祀られた小さな洞窟があり、蔦の生える岩壁と小さな池とともに、独特な雰囲気をもつ空間となっている。
神奈川宿②3-THE YOKOHAMA STANDARD

台町(だいまち)
かつて”神奈川の台”とも呼ばれた台町の坂道は、海に面した崖沿いに茶屋が連なる道で、眼下に袖ヶ浦と呼ばれた神奈川湊を一望する風光明媚な景勝地として名高く、歌川広重に描かれ、『東海道中膝栗毛』では弥次さん・喜多さんも立ち寄ったことで知られる。
「田中家」
広重の『東海道五拾三次 神奈川・台之景』の中で”さくらや”と書かれた茶屋のあった場所で文久3年(1863)から営業を続ける「田中家」は、坂本龍馬の妻おりょうが勤めたことでも知られる。
神奈川宿②1-THE YOKOHAMA STANDARD

神奈川台の関門跡(かながわだいのかんもんあと)
台町の坂を上り道が緩やかになったあたりに「神奈川台の関門跡」がある。開港後外国人殺傷事件が相次ぎ、これを防ぐために幕府は宿の東西に関門を築いた。神奈川台の関門は西側の関門。
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上台橋(かみだいばし)
神奈川台の関門跡を過ぎ、道が下りはじめほどなくすると、「神奈川宿歴史の道」の終点「上台橋」へ到着。横浜駅西口からほど近い鶴屋町3丁目交差点近くのこの場所がかつては海辺の道だったということに奇妙な感覚を覚えつつ、夕暮れを迎え神奈川宿を歩く小さな旅を終えた。
神奈川宿②12-THE YOKOHAMA STANDARD

終~横浜旧東海道を歩く 神奈川宿vol.2(浄龍寺~上台橋)~

 

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2015-02-17 | Posted in , 旧道・古道 | tag:

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