【横浜の坂道】富岡の谷戸坂(金沢区)
京急富岡駅の北東側には駅のすぐ近くながら谷戸のある丘陵地が広がっている。「谷戸坂」はこの丘に続く古道の坂道で、古刹・持明院先の谷戸の奥から坂上の尾根道まで至る。
持明院周辺の谷戸には住宅が連なっているが、丘のふもとの坂下にさしかかると風景は一変する。大きな樹木に囲まれた切通しのような坂道は、古道の雰囲気をよく残していて、タイムスリップしたような不思議な感覚をおぼえる。むき出しの巨木の根がつくる天然の装飾を横目に、夏でもひんやりと涼しい静かな坂を右へ左へ緩やかに蛇行しながらのぼっていくと、安永五年(1776頃)の建立という「谷戸坂地蔵尊」のある坂上の四辻に出る。この四辻から西へは氷取沢方面へ向かう古道がのびていて、北へは鳥見塚方面への道が続いている。疱瘡(天然痘)除けの神様として知られ現在は長昌時にある「芋観音」はかつて鳥見塚にあったというから、江戸時代の参詣者は富岡村の西側を通った金沢道から脇にそれて芋明神社へと向かい、この谷戸坂地蔵尊の脇でひと休みでもしたことだろうか。ともあれ、横浜に坂道数多くあれど、駅近くの生活空間とシームレスに接続した古道の坂道というのは珍しい。「地形海崖より村のほとりまでは平地にて、その他は全て山丘なり」と新編武蔵国風土記稿にも記されているように、古より山に囲まれた土地であった富岡の歴史風土を感じながら歩くことのできるユニークな坂道である。
京急富岡駅前から中通りを東方面へしばし進み、路地を入ると古刹・持明院がある。この辺りは丘に囲まれた谷戸の地形になっている。
持明院を過ぎた谷戸の奥には住宅が続く。
だんだん丘のふもとに近づいてゆくと…
風景は一変。古道の雰囲気を醸し出す。
常緑樹の巨木に、
むき出しの木の根。
木々に囲まれ、坂はうす暗く夏でもひんやりと涼しい。
坂下方面を望む。
立ち並ぶたくさんの樹木は、大きくうねったり、こぶがあったりと個性豊か。
緩やかに蛇行しながら坂は続く。
坂の中ほどから坂下方面を振り返る。
風情たっぷりの坂道だが、時折車も通り過ぎてゆく。
頂上が見えてきた。
坂上近くの形がユニークな樹木。
坂上付近から坂下方面を望む。
坂上に鎮座する谷戸坂地蔵尊
坂上から西側には古道が続く。
坂上から。
‐おわり‐
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