【横浜の商店街】三吉橋通商店街
中村川に架かる三吉橋と横浜橋通商店街の間に挟まれたわずか60mほどの短い通りに15軒ほどの店が並ぶ”日本一かわいい商店街”こと「三吉橋通商店街」。商店街の誕生は昭和5年(1930)4月1日とされ、店によってはそれ以前からこの地で営業していたというところもあるなど非常に歴史のある横浜の商店街であり、市民の台所として地域に密着しながら発展してきた。
短い通りには、米屋、肉屋、魚屋をはじめ、和菓子屋、時計屋、洋服屋、履物屋、中華料理店、居酒屋、ロックバー、理容店、写真専門店、刃物の研ぎ屋、さらには大衆演劇場まであり、想像以上に多様な内容がギュッと詰まった”日本一かわいい商店街”となっている。年月を経た店構えが良い雰囲気の昭和の風情が残る通りでは、店主とお客さん、買い物途中に出会ったお客さん同士が自然におしゃべりを楽しむ姿がよく見られ、三吉演芸場前では公演が終わった役者さんが観客を見送る「送り出し」の光景が見られたりと、人と人との距離感に温かみのある昔ながらの商店街。
三吉橋通商店街の入口
満寿田屋和菓子店
創業以来60年以上続く老舗和菓子店。大通りにも面した商店街の入口にあり、その風情ある佇まいにまず目を引かれる。ガラスケースにはみたらし団子、あん団子、大福、草餅、さくら餅、すあま、いなり、かんぴょう巻など王道の品々が並び、どれも美味しそうで選ぶのが難しくなってしまう。散歩の途中に風情ある和菓子屋にふらりと立ち寄り、団子でひと休憩というのも悪くない。
安室米店
商店街会長でもある現在の店主は3代目。戦時中、先代であるお父さんは一時米の配給所で働き、戦後にまた米屋に戻ったという。お店で人気の銘柄はやはりコシヒカリで、関東から東北を中心に様々な産地のものを取りそろえる。日ごろからお客さんの感想を大事に、自分で食べて美味しいと納得したものだけを仕入れているという。また最近では持ち込みの玄米を手頃な価格で精米してくれるサービスも人気。近所のおばあちゃんが自転車を押して買いにくれば、店主が自転車にしっかりと積んで見送ってくれる。そんな何気ない光景にほっこりする昔ながらの町のお米屋さん。
大阪屋
商店街一の古株である鮮魚店・大阪屋の創業は大正時代にまで遡る。三吉橋通商店街ができる前からこの地で営業し、関東大震災、太平洋戦争を乗り越えもうすぐ創業100年。店の名は初代がはじめ高松から大阪に出て商売を始めたことから付けられたという。鮮魚の他、現在5代目となる店主が下ごしらえをし、女将さんが作るという焼魚・煮魚・フライなどのお惣菜も人気。常連さんは好みのものをオーダーして買いに来るという。店内を飾る半世紀は前の物だという千社額も見事。
研ぎ屋 山惣商店
江戸の町屋のような佇まいの店に入ると、砥石の上を一定のリズムで滑る包丁の心地良い音が聞こえてくる。刃物の研ぎ専門という珍しい形態の店を訪れるのは、植木屋・大工などプロの職人のみならず一般の主婦など幅広く、包丁をはじめ鋏、鎌など様々な刃物が持ち込まれるという。町に研ぎ屋があると地域の刃物リテラシーも高くなるのか、実際に一般のお客さんが包丁を預けに受け取りにと入れ替わりやって来る。”研ぎ”は錆取り・あら研ぎ・なか研ぎ・仕上げ研ぎの4工程が基本。山惣商店ではさらにつや出し作業も行うため仕上がった刃は見た目にも美しい。「決して儲かる仕事ではないが、良い仕事をして、銭湯で一日を振り返り、一杯やるのが一番の幸せ」と笑顔で語る店主。良い道具を良く使えるようしっかりと整えてくれる町の頼れる研ぎ屋さん。
道具は作り手半分、持ち手(使い手)半分の両者で初めて良い道具になるだという。
Rock Bar Rudie’s(ロックバー・ルーディーズ)
昭和の香りが漂う商店街にあって、ガラス張りのオープンな入口からのぞく白黒チェックの床が一際目をひく2014年に開業したロックバー。オーナーのHASEさんは自らもギターを演奏するという現役のバンドマン。アメリカンダイナーのような素敵な内装はオーナーが考え大工の友人が施工し、壁を飾る絵画も画家の友人たちの手によるものという。暖かくなると入口の扉を開け放つというオープンマインドなお店には、ロック好きだけでなく、近隣に住むおじいちゃんまで様々な職業、年齢の人々が引き寄せられ気軽に立ち寄り夜の時間を楽しむという。商店街に新たな風を吹き込むアットホームなロックバー。
中華北京
昔ながらの”ザ・町の中華店”という店構えが良い雰囲気。タンタンメン、サンマーメン、タンメンなど多彩な麺類が人気。
遠藤理容店
大正期に開店という歴史ある理容店で、現在は5代目となる娘さんと女性技術者の二人で運営している。店内はビシッと整然としていて清潔そのもの、空気が澄んでいるように感じられるほどで気持ちが良い。最近は女性向けの顔そりも人気。
武田精巧堂時計店
90年以上この地で営業を続ける老舗。”日本一かわいい商店街”という三吉橋通商店街キャッチフレーズの生みの親でもある店主は2代目。時計と同時に眼鏡・アクセサリーも取り扱うのは、昔ながらの時計店のスタンダードなスタイルだといい、外のショーウィンドウから店内までたくさんの商品が埃一つかぶらず整然と並ぶ。店頭に並ぶセイコーの置時計や壁掛時計の数々をよく見ていると、最新の時計に混じって最近のものではないようなレトロなデザインの物もあることに気づく。意外なお宝デッドストックが眠っているかも?
肉の見上
昔ながらの店構えが良い雰囲気の創業48年の精肉店。かつては牛肉の卸業をやっていたという主人が目利きした牛肉には自信あり。毎日お昼頃までにズラリと並ぶバラエティ豊かな手づくりのお惣菜も人気。小分けで大体どれも100円とお財布にも優しい。そして、忘れてならないのは、平たく大判に揚げられた特製「メンチ」。歯ごたえが良くとにかく肉の味が旨いのは精肉店ならでは。近くを訪れたら必ず食したいハマの逸品。
通りの風景
フォトテック三吉橋
スマホやデジカメの写真のプリントはもちろん、フォトカードやポスター、お店のPOPの作成、さらには古い写真の復元まで、写真やプリントに関して幅広く対応してくれる町の技術屋さん。
三吉演芸場
三吉橋通商店街のシンボル「三吉演芸場」は昭和5年(1930)開業で今年で開業87年となる大衆演劇場。1990年代には存続の危機にあったが落語家桂歌丸師匠を会長に「三吉演芸場を残す会」が立ち上がり存続されることとなり、新しい建物と共に生まれ変わった。全国的にも珍しい通称”常打ち小屋”と呼ばれる常設の大衆演劇専門の芝居小屋で、旅芸人による芝居を中心に歌謡や舞踏などの演目が演じられる。公演終了後に役者さんが劇場の外で退出する観客を見送る「送り出し」の光景も人情味ある三吉橋通商店街ならではの風景。
三吉橋
たくさんの魅力的な商店が連なる”日本一かわいい商店街”「三吉橋通商店街」。市営地下鉄・阪東橋駅から横浜橋通商店街、三吉橋通商店街と横浜の下町商店街をはしごするのも楽しいし、三吉橋通商店街グルメを楽しみながら、商店街南側の丘の尾根道を辿って山手方面まで散策してみるのもおススメ。
三吉橋通商店街
所在地:横浜市南区浦舟町1-3
横浜市営地下鉄・阪東橋から徒歩7分
京急線・黄金町駅から徒歩11分